転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


234 こんなの運んできたら、みんなびっくりしちゃうよね



 途中で武器を持ったおじさんたちに会うなんて事があったけど、その後は何事もなくイーノックカウの西門が見えるとこまで着いたんだ。

 でね、その西門は朝や夕方と違ってそんなに長くはないけど、ちょこっとだけ中に入る列ができてたもんだから、僕たちの馬車はその列の最後に並ぼうとしたんだよ。

「おい! これはどういう状況なんだ!」

 そしたら門のとこにいた兵士さんが、すごい勢いで走ってきてそう聞いてきたんだよね。

「ああ、後ろのはみんな野盗ですよ」

「野盗って……」

 だからお父さんはそう答えたんだけど、兵士さんはそんなお父さんと馬車の後ろを見比べて、困った顔になっちゃった。

 僕がスリープで眠らせたおじさんたちなんだけど、さすがにそのままにして置く訳にはいかないからって、お父さんとお兄ちゃんたちが全員を縄で縛って僕が作ったフロートボードに載っけてここまで運んできてたんだ。

「ああ、こいつらはみんな生きてますよ。ただ眠ってるだけです。ルディーン、もう少しの間は寝たままなんだよな?」

「うん。叩いたりしなかったら、まだ起きないと思うよ」

 このスリープって魔法、ドラゴン&マジック・オンラインの頃だとこんなに長い間寝てなかったんだけど、なんでかこの世界では攻撃魔力とレベル差、それに知力とかによって寝てる時間が違うみたいなんだよね。

 この場合、僕とこのおじさんたちとは10レベル以上離れてるから早くて半日、深く魔法にかかってる人だと1日くらい寝たままなんだってさ。

「寝てるだけって……。だが、野盗と聞いてはそのままにする訳にはいかん。そのまま門へと進んでくれ」

「いいのですか?」

「いいも何も、この人数だぞ? 縛られているとは言え下手に時間をかけて起きて暴れられたら厄介だからな」

 そう言って僕たちの馬車の後ろを見る兵士さん。

 そしてその言葉を聞いて、列に並んでた人たちもみんなうんうんって頷いてるんだよね。

 それもそのはずで、実は僕たちを襲ってきたおじさんたち、寝ちゃった後に数えたら22人もいたんだ。

 それが全員フロートボードに縛られて載っけられてるんだもん。みんなが起きたらどうしよう? って思っても仕方がないよね。

「確かにそうですね。それではすみませんが、お先に」

 と言うわけで、お父さんは馬車を列の後ろから動かして、イーノックカウの西門へと移動したんだ。


「なるほど、グランリルの方だったのですか。それなら納得です」

 西門まで行った僕たちは、事情が聞きたいって言う兵士さんの誘導にしたがって、野盗のおじさんたちを引っ張ったまま馬車を兵士詰め所に移動させたんだ。

 でね、そこで野盗のおじさんたちを兵士さんたちが牢屋に連れて行っている間に、僕たちの入街審査をしてもらったんだ。

「さすがにあの人数ですからね。普通なら撃退どころか逃げることすら難しいのですが、あの村の方たちならこの程度の奴らなら物の数でもないでしょうね」

 20人以上いると、普通は兵士さんたちが大勢で捕まえに行くんだって。

 でも、僕たちは7人しかいないし、僕やキャリーナ姉ちゃんはまだ小さいでしょ。なのにあんなにいっぱいいる野盗のおじさんたちをどうやったら捕まえられるんだろうって、とっても不思議だったんだってさ。

「流石に俺たちの村の住人でも、全員無傷で捕まえるのはそう簡単にできませんよ。今回は運がよかっただけです」

「いやいや、ご謙遜を」

 そう言って笑いながらお父さんたちはお話をしてたんだけど、そこに別の兵士さんが来たんだよね。

「どうやらやつら、土蜘蛛のようですね」

「土蜘蛛だと!?」

 でね、その報告を聞いた兵士さんはびっくりしちゃったんだ。

 だからお父さんは、なんで? って聞いたんだけど、そしたらあのおじさんたちはとっても有名な野盗なんだってさ。

「あいつらは街道の隅に穴を掘ってそこに隠れ、人数が少なく護衛も付けていない馬車が通りかかると一斉に飛び出して襲い掛かるという一団でして。そのせいで遠くからでは見つける事ができず、兵を出しても空振りばかりだったのです」

 なにせ通りかかった馬車をよく見て、自分たちなら絶対に勝てるって相手しか襲わないから囮の馬車を出しても、男の人がいっぱい乗ってたら無視されちゃうんだって。

 でも20人以上もいるもんだから、少しで行ったら逆にやられちゃうからってどうしようもなかったらしいんだ。

「そんな奴らからしたら大人の夫婦に少年と少女しか乗っていないのに、その荷台には街に売りに行くらしき商品が多く積まれているのですから、格好のえさに見えたのでしょう。でもそれがまさか、一騎当千の兵ばかりが乗っている馬車とは思わないでしょうから、奴らもついてない」

 そう言って笑う兵士さん。散々苦労させられた野盗がつかまって、とっても嬉しかったんだろうね。


 その後、もうちょっとだけ野盗のおじさんたちを捕まえた時のお話をしてから、僕たちは帰っていいよって言われたんだ。
 
「それでは野盗討伐の報奨金と、奴らを犯罪奴隷として売却した代金は後日、冒険者ギルドを通して支払わせて戴きます。この度は本当にありがとうございました」

 でもね、僕たち馬車に乗って出発しようとした時に、お見送りしてた兵士さんがこんなことを言ったもんだから僕、びっくりしちゃったんだ。

「ねぇ、お母さん。犯罪奴隷ってなに? あのおじさんたち、売られちゃうの?」

「そうよ。悪い事をした人はね、兵士さんに捕まるととっても危ない鉱山に売られて、ずっと働かないといけなくなっちゃうのよ」

 そっか、悪い人たちは捕まるとそんな事になっちゃうんだ。


「いい機会だからみんなにも教えておくわね」

 お母さんが言うには奴隷には借金奴隷と犯罪奴隷の二種類があるんだって。

 でもね、おんなじ奴隷でもその二つは全く違うもんなんだってさ。

「犯罪奴隷は文字通り犯罪を犯した人がなる奴隷ね。これはその罪の重さによって売られる先が違うんだけど、さっきの野盗のように多くの人たちを困らせた人は、大体が鉱山の一番深いところで働く奴隷にされるわ」

 鉱山と言っても入口は魔法とか木枠とかで崩れないようになってるから、働くのは大変だけど危なくはないんだって。

 でも、奥の方にはそんなものがないから崩れちゃったり、湧水が出るところに当たって溺れちゃったりするらしいんだ。

「同、怖いでしょ? 悪い事をするとそんなところに送られちゃうの。だからみんな、絶対に悪い事はしちゃだめよ」

「うん! 僕、絶対悪もんになんかならないよ!」

 僕がそう返事をすると、お母さんはにっこり笑って僕の頭をなでてくれたんだ。

「そして次に借金奴隷ね。これも文字通り借金をした人がなる奴隷なんだけど、さっきの犯罪奴隷とは大きく違うところがあるのよ」

「違うところ?」

「ええ。こっちは奴隷と言っても何かを無理やりやらされるんじゃなくって、予め仕事のきつさや従事する期間を見て、売られる相手を自分で選ぶことができるのよ」

 悪い事をして人はこれをしなさいって言われたことを絶対にしないといけないらしいんだけど、借金をした人はお金を返すために奴隷になるんだから、早く返したい人はとっても大変な仕事をすればいいし、楽な仕事の方がいいって人はとっても長い間働けばいいんだって。

 要は拘束時間が長い、冒険者ギルドで受ける依頼みたいなものなんだってさ。

「そりゃあ借金額によってはかなりきつい仕事を長い間やらなければならないなんて事もあるけど、別に命の危険があるわけじゃないし、その仕事も冒険者ギルドや商業ギルドが管理している物ばかりだから売られた先で違う内容の仕事をさせられるなんて事はまずないの」

 もしそんな事をさせたりしたら、借金奴隷を買った人が罰を受けるんだってさ。

「どちらの奴隷も今の私たちにはあまり関係ないんだけど、あなたたちが将来結婚した時に借金奴隷を買うような立場になるかもしれないでしょ。だから覚えておいてね」

 そっか。僕たちの村には奴隷なんて人いないけど、お姉ちゃんたちはよその村や街にお嫁に行ったりするかもしれないもんね。

 それが解ってるのか、レーア姉ちゃんとキャリーナ姉ちゃんは、僕やお兄ちゃんたちよりも真剣な顔をしてお母さんの話に頷いていたんだ。


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